で、いきなり、カレワラへ行ってみようと決心した。彼女は、蓬莱和子が芦屋に住む金持の夫人で、声楽家であるという、それだけのことを知っていたにすぎない。だから、カレワラなんておかしな名前の喫茶店の存在もはじめて知ったわけなのだ。疑念が湧いた。しかし、彼女が招待に応じてゆけは、すぐに何もかも諒解出来るだろうと思った。午後から、いそいそと美粧院へ出かけてセットしてもらい単衣の御召を箪司から出し、襦袢の衿をかけなおした仁科たか子は、すっかり外出気分になった。
カレワラは、本日終了の札を出した。蓬莱和子は、黒のシフォンヴェルヴェットのワンピースを着て、昨日、夫が買って来てくれた真珠の首飾りをしていた。彼女は、女の子に手伝わせてカナッペをつくり、その他、お酒や御馳走を注文した。奥の部屋からピアノを運び出し、喫茶店らしくなく、家具のおきかえもした。真紅なばらを壺いっぱいに活けた。これはその朝、南原杉子が花屋にとどけさせたものである。蓬莱和子は、今日の集りが、非常に面白いものであると考えた。そして自分が中心になれると思った。客はかならず集るものと信じていた。用意万端ととのえた彼女は、ピアノにむかって、
前へ
次へ
全94ページ中75ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久坂 葉子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング