君の云うこと」
「私は、あなたがわからないことが、何か知っててよ。私が三人の人に愛情をもつということでしょう? だって何も一人の人以外に、愛情を抱いてはいけないことはない筈よ。それからあなたの心はちゃんと見抜けてよ。あなたは、奥様以外の女性が複数だとしても、単に肉体的な快楽の対象にしているし、スポットはまだ手が届かないだけ、いずれそうなるに違いないわ、そして、すぐにあきるのでしょう、わかっててよ」
「どうだっていいさ、理窟のこね合いはよしにしよう」
蓬莱建介は黙るより他はない。
「人間って、割切れないものを割切ろうとする。へんね」
南原杉子も、これ以上、理窟も云いたくなかった。彼女は、阿難がしきりに身もだえしはじめたことに、はっとしたのだ。
――阿難、私は、未来によこたわっている大きな事件をたのしみにしているのよ。そこへ到達するまでのことは、すべて手段として自分でみとめているだけよ――
「ねえ、あなたを好きなのは、あなたに迷惑かしら」
「別にね、僕だって好きなんだからね」
「だったらいいわ、いいじゃないの」
「何が」
「いえね、じやあ、度々会ってくださる?」
「こっちがのぞむとこ
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