きないので、そこで元豊を杖で敲《たた》いた。元豊は大声をあげて啼き叫んだ。すると小翠が始めて顔の色を変えて膝を折ってあやまった。それで夫人の怒りもすぐ解けて元豊を敲くことをやめていってしまった。小翠は笑って泣いている元豊を伴《つ》れて室《へや》へ入り、元豊の着物の上についた塵を払い、涙を拭き、敲かれた痕をもんでやったうえで、菓《かし》をやったので元豊はやっと笑い顔になった。
小翠は戸を閉めて、また元豊を扮装《ふんそう》さして項羽《こうう》にしたて、呼韓耶単于《こかんやぜんう》をこしらえ、自分はきれいな着物を着て虞《ぐ》美人に扮装して帳下の舞を舞った。またある時は王昭君《おうしょうくん》に扮装して琵琶を撥《ひ》いた。その戯れ笑う声が毎日のようにやかましく室の中から漏れていたが、王は馬鹿な悴が可愛いので嫁を叱ることができなかった。そこで聞かないようなふりをして、そのままにしてあった。
同じ巷《まち》に王と同姓の給諌《きゅうかん》の職にいる者がいた。王侍御の家とは家の数で十三、四軒隔っていたが、はじめから仲がわるかった。その時は三年毎に行うことになっている官吏の治績を計って、功のある者は
前へ
次へ
全19ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
蒲 松齢 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング