が、だれも知った人はなかった。不意に女の小さな声で話をする声が聞えて来た。それがひどく阿英に似ているので、嫂は※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]にそういって傍へいって験《しら》べさした。果してそれは阿英であった。※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]はうれしくてうれしくてたまらないので、そのまま臂《て》をつかまえて釈《はな》さなかった。女はそこで一緒に歩いていた者にいった。
「姉さん、あなたは先に帰ってください。私は甘の姉さんにお目にかかって来ますから。」
 もう嫂がそこへ来た。嫂は阿英を見て泣いた。阿英は嫂を慰めた。そしていった。
「ここは危険です。」
 阿英はそこで勧めて家へ帰そうとした。※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]をはじめ皆土寇の来るのを懼れて引返そうとしなかった。阿英は強《し》いていった。
「だいじょうぶです。」
 そこで一緒になって帰って来た。阿英は土で戸を塞《ふさ》いで家の中から外へ出ないようにさした。そして、坐って、二言三言話をするなり帰っていこうとした。嫂は急にその腕をつかみ、また二人の婢に左右の足をつかまえさした。阿英は仕方なしにいることにな
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