るのです。おかあさんにあわないで、死んでしまいそうだ。」
「まあ可愛そうに、ここから四五百|哩《まいる》はなれていますよ。」
 女の人は気の毒そうにいいました。
 マルコは顔に手をおしあてて、「わたしはどうしたらいいのだろう、」
 といって泣き出しました。
 女の人はしばらくだまって考えていましたが、やがて思い出したように、
「ああ、そうそう、よいことがある、この町を右の方へゆくと、たくさんの荷車を牛にひかせて明日ツークーマンへ出かけてゆく商人がいますよ。その人に頼んでつれていってもらいなさい。何か手つだいでもすることにして、それが一番よい今すぐに行ってごらんなさい。」
 といいました。
 マルコはお礼をいいながら[#「いいながら」は底本では「いいならが」]ふくろをかつぎ急いで出かけました。しばらくゆくとそこには大ぜいの男が荷車に穀物のふくろをつんでいました。丈《せい》の高い口ひげのある男が長靴をはいて仕事の指図をしていました。その人がこの親方でした。
 マルコはおそるおそるその人のそばへ行って「自分もどうかつれていって下さい。おかあさんをさがしにゆくのだから。」
 とたのみました。
 親方はマルコの様子をじろじろと見ながら
「お前をのせてゆく場所がない。」
 とつめたく答えました。
 マルコは一生懸命になって、たのみました。
「ここに十五リラあります。これをさしあげます。そして途中で働きます。牛や馬の飲水もはこびます。どんな御用でもいたします。どうぞつれて行って下さい。」
 親方はまたじろじろとマルコを見てから、今度はいくらかやさしい声でいいました。
「おれたちはツークーマンへゆくのではない、サンチヤゴという別の町へゆくのだよ。だからお前をのせていっても途中で下りねばならないし、それに下りてからお前はずいぶん歩かなければならぬぞ。」[#「」」は底本では欠落]
「ええ、どんな長い旅でもいたします。どんなことをしましてもツークーマンへまいりますからどうかのせていって下さい。」
 マルコはこういってたのみました。
 親方はまた、
「おい二十日もかかるぞ。つらい旅だぞ。それに一人で歩かねばならないのだぞ。」
 といいました。
 マルコは元気そうな声でいいました。
「はいどんな事でもこらえます、おかあさんにさえあえるなら。どうぞのせていって下さい」
 親方はとうとうマルコの
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