活を送って、あの犬たちがおおかみに食べられた夜や、ジャンチイイの石切り場のあの晩《ばん》のような目に会ったり、あれほどひもじいめをしたり、ヴィタリス親方が刑務所《けいむしょ》に入れられて、一スーももうけることができず、村から村へと追い立てられたりしたようなことに出会ったら、だれだってあすはまっ暗やみ、現在《げんざい》さえも不安心《ふあんしん》でたまらないのが当たり前だ。危険《きけん》な、みじめな、浮浪人《ふろうにん》の生活をわたしは自分が送ってきたことも忘《わす》れはしないのだ。だがいまそれをやめたら、わたしはいったいどうしていいかわからないではないか。それにもう一つ、旅に出るについて決心を固《かた》くするものがあった。いまさらよそのうちに奉公《ほうこう》するよりも、わたしにはこの流浪《るろう》の旅がずっと自由で気楽なばかりでなく、エチエネットや、アルキシーやバンジャメン、それからリーズとしたやくそくを果《は》たすためにもこの旅行を思いとどまることはできなかったのだ。どうしてこのことはあの人たちを見捨《みす》てないかぎり、やめられないのだ。もっともエチエネットやアルキシーやバンジャメン
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