らず話してあげるから」
 わたしは肩《かた》から背嚢《はいのう》を下ろして、勧《すす》められたいすにこしをかけた。わたしがぬれてどろをかぶった足を炉にのばすと、祖父《そふ》はうるさい古ねこが来たというように、つんと向こうを向いてしまった。
「おかまいでない」と父親は言った。「あのじいさんはだれも火の前に来ることをいやがるのだ。けれどおまえ、寒ければかまわないよ」
 わたしはこんなふうに老人《ろうじん》に対して口をきくのを聞いてびっくりした。わたしはいすの下に足を引っこめた。そのくらいな心づかいはしなければならなとわたしは考えた。
「おまえはこれからわたしの総領《そうりょう》むすこだ」と父親が言った。「母さんと結婚《けっこん》して一年たっておまえは生まれたのさ。わたしがいまの母さんと結婚《けっこん》するとき、そのまえからてっきり自分と結婚するものと思っていたある若《わか》いむすめがもう一人あった。それが結婚のできなかったくやしまぎれに、生まれて六|月《つき》目のおまえをぬすみ出して行った。わたしたちはほうぼうおまえを探《さが》したが、パリより遠くへはどうにも行けなかった。わたしたちはおま
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