く》に向かって、キャベツのスープをすすっていた。そのにおいがわたしにとってはあんまりであった。わたしはゆうべなんにも食べなかったことをはげしく思い出した。わたしは気が遠くなるように思って、よろよろしながら炉《ろ》ばたのいすにこしを落とした。
「おまえさん、気分がよくないか」と植木屋がたずねた。
わたしはかれに、どうも具合の悪いことを話した。そうしてしばらく火のそばへ置《お》いてくれとたのんだ。
でもわたしの欲《ほっ》していたのは火ではなかった。それは食物であった。わたしはうちの者がスープを吸《す》うところをながめて、だんだん気が遠くなるように思えた。わたしがかまわずにやるなら一ぱいくださいと言うところであったが、ヴィタリスはわたしにこじきはするなと教えた。わたしはかれらにおなかが減《へ》っているとは言いださなかった。なぜだろう。わたしはひもじゅうございますと言うよりは、なにも食べずに死んでしまうほうがよかった。
あの目にきみょうな表情《ひょうじょう》を持った女の子は――名前をリーズと呼《よ》ばれていたが、わたしの向こうにこしをかけていた。この子はなにも言わずに、じっとわたしのほう
前へ
次へ
全326ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング