うにおもしろかった。それを見たということはたいへんゆかいであったけれど、そこへ帰って行こうとはゆめにも思わなかった。
それよりもわたしはいつも頭の上に大空を、それは雪をいっぱい持った大空でも、いただいていたかった。野外の生活がわたしにはずっと性《しょう》に合っていた。そう言ってわたしはかれらに話した。だれもおどろいていた。とりわけ「先生」がおどろいていた。カロリーはとちゅうで出会うと、わたしを「やあ、ひよっこ」と呼《よ》んだ。
みんながわたしをヴァルセに止めたがって、いろいろ勧《すす》めているあいだ、マチアはひどくぼんやりして考えこむようになった。そのわけをたずねると、かれはいつも、なになんでもないと打ち消していた。
いよいよ三日のうちにここを立つことをわたしがかれに話したとき、かれは初《はじ》めてこのごろふさいでいたわけを語った。
「ああ、ぼくはきみがここにこのまま残《のこ》って、ぼくを捨《す》てるだろうと思ったから」とかれは言った。
わたしはかれをちょいと打った。それはわたしを疑《うたが》わないように、訓戒《くんかい》してやるためであった。
マチアはいまではもう自分で自分
前へ
次へ
全326ページ中154ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング