ながら、一日の仕事をすまして、日光の中に出て来るのであった。かれらはひざがしらが痛《いた》むかのように、重い足どりでのろのろと出て来た。わたしはそののちに、地下の坑道《こうどう》のどん底《そこ》まではしごを下りて行ったとき、それがどういうわけだかはじめてわかった。かれらの顔はえんとつそうじのようにまっ黒であった。かれらの服とぼうしは石炭のごみをいっぱいかぶっていた。やがてみんなは点燈所《てんとうしょ》にはいって、ランプをくぎに引っかけた。
ずいぶん注意して見ていたのであるが、やはり向こうから見つけてかけ寄《よ》って来るまで、わたしたちはアルキシーを見つけなかった。もうすこしでかれを見つけることなしにやり過《す》ごしてしまうところであった。
実際《じっさい》頭から足までまっ黒くろなこの少年に、あのひじの所で折《お》れたきれいなシャツを着て、カラーの前を大きく開けて白い膚《はだ》を見せながら、いっしょに花畑の道をかけっこしたむかしなじみのアルキシーを見いだすことは困難《こんなん》であった。
「やあ、ルミだよ」とかれはそばに寄《よ》りそって歩いていた四十ばかりの男のほうを向いてさけんだ。その人はアッケンのお父さんと同じような、親切な快活《かいかつ》な顔をしていた。二人が兄弟であることを思えば、それはふしぎではなかった。わたしはすぐそれがガスパールおじさんであることを知った。
「わたしたちは長いあいだおまえさんを待っていたよ」とかれはにっこりしながら言った。
「パリからヴァルセまではずいぶんありましたよ」とわたしは笑《わら》い返しながら言った。
「おまけにおまえさんの足は短いからな」とかれは笑いながら言い返した。
カピもアルキシーを見ると、うれしがっていっしょうけんめいそのズボンのすそを引《ひ》っ張《ぱ》って、お喜《よろこ》びのごあいさつをした。このあいだわたしはガスパールおじさんに向かって、マチアがわたしの仲間《なかま》であること、そしてかれがだれよりもコルネをうまくふくことを話した。
「おお、カピ君もいるな」とガスパールおじさんが言った。「おまえ、あしたはゆっくり休んで行きなさい。ちょうど日曜日で、わたしたちにもいいごちそうだ。なんでもアルキシーの話ではあの犬は学校の先生と役者をいっしょにしたよりもかしこいというじゃないか」
わたしはおばさんに対して気持ち悪く感じたと同じくらいこのガスパールおじさんに対しては気持ちよく感じた。
「さあ、子どもどうし話をおしよ」とかれはゆかいそうに言った。「きっとおたがいにたんと話すことが積《つ》もっているにちがいない。わたしはこのコルネをそんなにじょうずにふく若《わか》い紳士《しんし》とおしゃべりをしよう」
アルキシーはわたしの旅の話を聞きたがった。わたしはかれの仕事の様子を知りたがった。わたしたちはおたがいにたずね合うのがいそがしくって、てんでに相手《あいて》の返事が待ちきれなかった。
うちに着くと、ガスパールおじさんはわたしたちを晩飯《ばんめし》に招待《しょうたい》してくれることになった。この招待ほどわたしをゆかいにしたものはなかった。なぜならわたしたちはさっきのおばさんの待遇《たいぐう》ぶりで、がっかりしきっていたから、たぶん門口《かどぐち》で別《わか》れることになるだろうと、道みちも思っていたからであった。
「さあ、ルミさんとお友だちのおいでだよ」おじさんはうちへはいりかけながらどなった。
しばらくしてわたしたちは夕食の食卓《しょくたく》にすわった。食事は長くはかからなかった。なぜなら金棒引《かなぼうひ》きであるこのおばさんは、その晩《ばん》ごくお軽少《けいしょう》のごちそうしかしなかった。ひどい労働《ろうどう》をする坑夫《こうふ》は、でもこごと一つ言わずに、このお軽少な夕食を食べていた。かれはなによりも平和を好《この》む、事《こと》なかれ主義《しゅぎ》の男であった。かれはけっしてこごとを言わなかった。言うことがあれば、おとなしい、静《しず》かな調子で言った。だから夕食はじきにすんでしまった。
ガスパールおばさんはわたしに、今晩《こんばん》はアルキシーといっしょにいてもいいと言った。そしてマチアにはいっしょに行ってくれるなら、パン焼《や》き場《ば》にねどこをこしらえてあげると言った。
その晩《ばん》それから続《つづ》いてその夜中の大部分、アルキシーとわたしは話し明かした。アルキシーがわたしに話したいちいちがきみょうにわたしを興奮《こうふん》させた。わたしはもとからいつか一度|鉱山《こうざん》の中にはいってみたいと思っていた。
でもあくる日、わたしの希望《きぼう》をガスパールおじさんに話すと、かれはたぶん連《つ》れて行くことはできまい、なんでも炭坑《たんこう》で働《はたら
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