そこでおし問答が始まった。だが老人《ろうじん》はまもなくやめて、「子どもにはおもしろくない話です。外へ出て遊ばせてやるがよろしい」と言った。そうしてバルブレンに目くばせをした。
「よし、じゃあ裏《うら》へ行っていろ。だがにげるな。にげるとひどい目に会わせるから」
 バルブレンがこう言うと、わたしはそのとおりにするほかはなかった。それで裏庭へ出るには出たが、遊ぶ気にはなれない。大きな石にこしをかけて考えこんでいた。
 あの人たちはわたしのことを相談《そうだん》している。どうするつもりだろう。
 心配なのと寒いのとでわたしはふるえていた。二人は長いあいだ話していた。わたしはすわって待っていたが、かれこれ一時間もたってバルブレンが裏《うら》へ出て来た。
 かれは一人であった。あのじいさんにわたしを手わたすつもりで連《つ》れて来たのだな。
「さあ帰るのだ」とかれは言った。
 なに、うちへ帰る。――そうするとバルブレンのおっかあに別《わか》れないでもすむのかな。
 わたしはそう言ってたずねたかったけれども、かれがひどくきげんが悪そうなのでえんりょした。
 それで……だまってうちのほうへ歩いた。
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