《なかま》の者に、便《たよ》りをことづけては来た。
「バルブレンのおっかあ、こっちのもたっしゃだよ。相変《あいか》わらずかせいでいる、よろしく言ってくれと言って、このお金を預《あず》けてよこした。数えてみてください」
これだけのことであった。おっかあも、それだけの便《たよ》りで満足《まんぞく》していた。ご亭主《ていしゅ》がたっしゃでいる、仕事もある、お金がもうかる――と、それだけ聞いて、満足《まんぞく》していた。
このご亭主《ていしゅ》のバルブレンがいつまでもパリへ行っているというので、おかみさんと仲《なか》が悪いのだと思ってはならない。こうやって留守《るす》にしているのは、なにも気まずいことがあるためではない。パリに滞在《たいざい》しているのは仕事に引き留《と》められているためで、やがて年を取ればまた村へ帰って来て、たんまりかせいで来たお金で、おかみさんと気楽にくらすつもりであった。
十一月のある日のこと、もう日のくれに、見知らない一人の男がかきねの前に立ち止まった。そのときわたしは、門口《かどぐち》でそだを折《お》っていた。中にはいろうともしないで、かきねの上からぬっと頭を出
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