してきたのはベッキイでした。ベッキイは泣き声を出すまいと耐《こら》えていたので、真紅《まっか》な顔をしていました。
「あのう、御免下さい。私悪いとは思ったのですけれど。でも、私、お人形を見ていたんですの。そこへ、奥様が入っていらしったので、私|吃驚《びっくり》して、この中に隠れてしまったんですの?」
「じゃアお前は、そこで初《はじめ》っから立ち聞きをしていたわけだね。」
「いいえ、奥様。立ち聞きするつもりなんぞありゃアしません。見つからずに逃げ出せるものなら、逃げ出そうと思ったのですけど、とても駄目だと思いましたから、仕方なしに、ここに隠れていたんです。立ち聞きなんてするつもり、ちっともなかったんですけど、でも、聞えたんだから仕方ありません。」
ベッキイは、おそろしい奥様が目の前にいるということも忘れたかのように、わっと泣き出しました。
「お、お、奥様。わたし叱られると知っても申さずにはいられません。わたし、あのセエラ様がお可哀そうで、お可哀そうで――」
「出て行きなさい。」
「ええ、まいります。でも、ちょっとわたし奥様に伺いたいことがあるんでございますの。セエラ様は、あんなに御不自
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