ゃアありませんか。ダイヤモンド鉱山だけでも――」
 バアロウ氏は、くるりと女史の方へ向き直りました。
「ダイヤモンド鉱山なんて、そんなもの、あるものですか。そんなものは、あったためしもない。」
 ミンチン女史は、たちまち椅子から立ち上りました。
「え? 何と仰しゃいます?」
 バアロウ氏は、意地悪く答えました。
「とにかく、そんなものは、なかった方がよかったくらいです。」
「なかった方がよかったって?」
 ミンチン女史は、椅子の背をしかと掴んで叫びました。何か素敵な夢が消えて行くような気がしました。
「ダイヤモンド鉱山などというものは、富よりも破産を意味する場合が多いものです。事業に明るくない人が、親友の手の中《うち》にまるめこまれて、その親友の鉱山に投資するなんて、大間違いです。死んだクルウ大尉にしても――」
 今度は、ミンチン女史が皆までいわせませんでした。
「死んだ大尉ですって? まさか、あなたはクルウ大尉が――」
「大尉は亡くなられました。事業が面白くないところへ、マラリヤ熱に襲われて亡くなられたのです。」
 ミンチン女史は、どかりと腰を落しました。女史はぼんやりしてしまいまし
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