てあの眠っている小娘を見付けたのでした。
「まア。」セエラは思わず小さい声でいいました。「可哀そうに!」
セエラは、大事な椅子に薄汚い子が掛けているのを見ても、腹を立てるどころか、かえってベッキイに逢えてよかったと思いました。ここに眠っているのは、セエラの作ったお話の主人公で、彼女が眼を覚しさえすれば、セエラはその主人公のお話をすることも出来るのです。セエラは、そっとベッキイの方に歩みよりました。ベッキイは微かにいびきをかいていました。
「自然に眼を覚してくれればいいが。」とセエラは思いました。「そっと眠らしといてあげたいけど、ミンチン先生に見つかりでもすると、きっと叱られるから、可哀そうだわ。もうちっとの間、そっとしといてあげましょう。」
セエラはテエブルの端に腰かけて、細い脚をぶらぶらさせながら、どうするのが一番いいかと、思いまどいました。今にもアメリア嬢が入って来ないとも限りません。そうすれば、ベッキイはきっと叱られるに違いありません。
「でも、とても疲れているのね。」
セエラがそう思ったとたん、一塊《ひとかたまり》の石炭が燃え砕け、炉枠にぶっつかって、音を立てました。ベッ
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