とりと落ちました。ラヴィニアは少女の方へ振り向きました。
「あの娘《こ》、聞いてたのよ。」
 とがめられた少女は、いきなり箒《ほうき》を取り上げ、石炭函を抱えて、怯えた野兎《のうさぎ》のようにそそくさ[#「そそくさ」に傍点]と出て行きました。
 それを見ると、セエラはむらむらして来ました。
「私、あの娘が聞いているのを知っていたのよ、なぜ聞いてちゃアいけないの?」
 ラヴィニアは大気取りで頭を振り上げました。
「そりゃア、あなたのお母さんは、女中にお話をしてやってもいいと仰しゃるかもしれませんさ。だけど、私のお母さんは、そんなことしちゃアいけないと仰しゃってよ。」
「私のお母さんですって?」セエラは吃驚《びっくり》したようにいいました。「ママはきっといけないなんて仰しゃらないと思うわ。ママは、お嬢さんであれ、女中であれ、誰であれ、同じようにお話を聞いていいとお思いになってるわ。」
「でも、あなたのママは、もうお亡くなりになったんでしょう。亡くなった方に、どうしてそんなことが解るの?」
「じゃア、ママにそれが解らな[#「らな」は底本では「なら」]いって仰しゃるの?」セエラは低い、きびしい
前へ 次へ
全250ページ中47ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
バーネット フランシス・ホジソン・エリザ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング