き出たその子は、あまり怜悧《りこう》そうではありませんでしたが、気質《きだて》は大変よさそうに見えました。亜麻色の髪をかたく結び、リボンをつけていました。ジュフラアジ氏がセエラに話しかけた時、その少女はちょっと怯えた眼をしました。が、セエラがいきなりフランス語で答えると、少女は吃驚《びっくり》して飛び上り、真紅《まっか》になりました。何週間も何週間も、仏語の「父《ペール》、母《メール》」さえ覚えられずに泣いていたところへ、ふいに自分の知らぬ単語まで造作なく動詞でつなぎ合せて話しているのを見ると、少女はたまらなくなったのでした。
 彼女は夢中で見つめながら、思わずリボンを噛んだので、ミンチン女史に見つかってしまいました。女史はちょうどむしゃくしゃしているところだったので、たちまち少女に喰ってかかりました。
「セント・ジョン! そのお行儀は何ですか。肱《ひじ》をお直しなさい。口からリボンをお出しなさい。すぐお立ちなさい!」
 セエラはそれを見ると、その子がひどく可哀そうになり、お友達にでもなってあげたいような気持になりました。他人《ひと》が悩んでいたり、不幸であったりすると、すぐその諍《い
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