て、床に坐っていました。
「それにあれは、私の友達としてつかわされたバスティユ鼠なのよ。」
「まだバスティユのつもりなの? いつでも、ここはバスティユだというつもり[#「つもり」に傍点]でいらっしゃるの?」
「たいていそのつもりよ。時とすると、どこか別の所のつもり[#「つもり」に傍点]にもなるけど、バスティユのつもり[#「つもり」に傍点]になら、すぐなれるわ。殊に寒い日などには。」
ちょうどその時、アアミンガアドは寝台《ベット》から転《ころが》り落ちそうになりました。向うから壁をコツ、コツと叩く音を聞いたからでした。
「なアに? あれ?」
セエラは立ち上って、お芝居の口調で答えました。
「あれこそは、隣の監房にいる囚人じゃ。」
「ベッキイのこと?」
「そうよ。こうなの、コツ、コツ と二ツ叩くのは、『囚人よ、そこにいるのですか?』という意味なの。」
セエラは返事でもするかのように、こちらから壁を三度叩きました。
「ね、これは、『はいおります。別に変りはありません。』という意味なの。」
すると、ベッキイの方から、コツ、コツ、コツ、コツと、四つ叩く音がしました。
「あれは、こうなの、
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