いるようでしたが、雀のような心を持っているとみえ、さっきの雀のように、だんだんパン屑の方に寄って来ました。
「おいで。私は罠じゃアないから。食べてもいいのだよ、可哀そうに。バスティユの囚人達は、鼠と仲よしになったっていうから、私もお前と仲よくなろうかしら。」
 どうして動物に物が解るのか。その訳は解りませんが、しかし、動物に物の解るのは事実です。ことによると世の中には言葉でない言葉があって、何にでも、それが通じるのかもしれません。ことによると、また世の中の事物には、何にでも、目に見えぬ魂があって、声も立てず、話し合うことが出来るのかもしれません。それはとにかく、鼠はセエラがこういった瞬間、もう安心だと思ったようでした。彼はそろそろとパン屑の方に行き、それを食べはじめました。彼は食べながら、さっきの雀のように、時々セエラの方を見て、どうもすみません、というような眼をしました。セエラは、それにひどく心を動かされました。
 それから一週間ほどたったある晩、アアミンガアドがそっと屋根裏へ忍び登って、戸を叩きますと、室内は妙にひっそりしていました。セエラは寝てしまったのかしら、と訝《いぶか》って
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