ど使いふるした椅子、テエブル。明りとりの天窓《ひきまど》には、物憂い灰色の空がのぞいているばかりです。その下に、こわれた紅い足台があるのを見つけて、セエラはそこに腰を下しました。セエラは膝の上にエミリイを寝かし、両手で抱きながら、エミリイの上に自分の顔を伏せて、しばらくじっと坐っていました。
 ひかえめに戸を叩く音がして、戸の間に泣き濡れたベッキイの顔が現れました。ベッキイは、さっきから泣きづめに泣きながら、前掛であまり眼をこすったものですから、すっかり顔が変っていました。
「お、お、お嬢様、ちょっと、あの、ちょっと入っちゃアいけませんか。」
 セエラは、ベッキイに笑ってみせようとしましたが、どうしても笑うことが出来ませんでした。が、ベッキイが心から悲しんでいるのを見ると、セエラは急に子供らしい顔になり、手をさしのべて、しくしく泣き出しました。
「ベッキイちゃん、いつか私あなたに、私達は同じような娘同士だといったことがあるでしょう。ね、嘘じゃアなかったでしょう? 二人の間には、もう身分の違いなんてないんですもの。私は、宮様《プリンセス》でもなんでもなくなってしまったのよ。」
 ベッキイは駈けよって、セエラの手をとり、自分の胸におしあてました。ベッキイは欷歔《すすりな》きながら、セエラの傍《かたわら》に跪いていいました。
「お嬢様は、どんなことが起ったって、やっぱり宮様《プリンセス》よ。何が起ったって、どうしたって、宮様《プリンセス》以外のものにはなるもんですか。」

      八 屋根裏にて

 セエラはいつまでも、初めて屋根裏に寝た晩のことを忘れることは出来ませんでした。夜もすがらセエラは、子供にしては深すぎる、狂わしい悲しみにひたされていました。が、セエラはそのことを誰にも話しませんでした。また話したとて、誰にも解る悲しみではなかったでしょう。セエラは、寝られぬ夜の闇の中で、ともすると、寝慣れぬ堅い寝床や、見慣れぬあたりのものに心を煩《わずら》わされました。が、それはかえって彼女の気をまぎらしてくれたようなものでした。そんなまぎれがなかったら、セエラは悲しみのあまりどうなったかわからなかったでしょう。
「パパは、おなくなりになったのだ。パパは、おなくなりになったのだ。」
 寝床に入ってしばらくの間は、そのことばかり考えていました。寝床が堅いと気のついたのは、寝
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