いました。
「その人形も――その莫迦々々しい人形のお金を払ったのも、私なんだ。」
セエラは椅子の方に顔を向けて、「最後の人形、最後の人形」と、思わず口の中でいいました。
「最後の人形だって? まったくだよ、この人形は私のものだ。お前の持ってるものは、何もかも私のものなのだよ。」
「じゃア、どうか、そのお人形を持ってらしって下さい。私、そんなもの要りません。」
セエラが喚いたり怯えたりしたら、ミンチン女史はセエラをもう少しは劬《いたわ》ってやったかもしれません。女史は人を支配して、自分の力を試してみるのが愉快だったのでした。が、セエラの凛とした顔を見、誇《ほこり》のある声を聞くと、自分の力が空しく消えて行ったような気がして、口惜しくなるのでした。
「勿体ぶった様子なんかおしでないよ。もう、お前は宮様《プリンセス》じゃアないのだからね。お前は、もう、ベッキイと同じことさ。自分で働いて、自分の口すぎをしなければならないのだよ。」
意外にも、セエラの眼には、ふと輝きが――救いのかげが浮んで来ました。
「働かして下さいますの? 働けさえすりゃア、何もそう悲しかアありませんわ。何をさして下さいますの?」
「何でも、いいつけられたことをするんだよ。お前はよく気のつく子だから、役に立つように心がけるのなら、ここに置いてあげてもいいと思うのだよ。フランス語もよく出来るのだから、小さい人達のおさらいもしてあげられるだろう。」
「おさらい、させて下さいます? 私、フランス語なら教えられると思いますわ。小さい人達は私を好いて下さるし、私も小さい人達が好きですから。」
「人が好いてくれるなんて、莫迦なことをおいいでない。小さい人達のおさらいをするほか、お前はお使いに行ったり、お台所の手伝いをしたりしなければならないのだよ。私の気に入らないことでもあったら、すぐ逐い出してしまうから、そのつもりでおいで。じゃア、向うへおいで。」
そういわれても、セエラはまだちょっとの間、ミンチン先生を見つめていました。幼い心の中で、セエラはいろいろのことを考えていたのでした。やっと立ち去ろうとしますと、
「お待ち!」と先生はいいました。「私に、ありがとうございます、という気はないのかい?」
「何のために?」
「私の親切に対してさ。お前に家庭《ホーム》を恵んでやる親切に対してさ。」
セエラは小さい胸を波
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