セスもいないのだろう。あのプリンセスも!」
 ベッキイはしゃくり上げて来る欷歔《すすりなき》を、ごくりとのみこみながら戸を押しあけました。と、思わず彼女は声を立てました。
 ラムプは室内に照りはえ、火は燃えさかり、夕餉の支度もちゃんと出来ています。そしてラム・ダスが笑いながら、彼女の方を見て立っているのです。
「お嬢様がお気づきになりましてね。ご主人様に、すっかりあなたのことをお話しになりましたのですよ。お嬢様は、御自分の幸運《しあわせ》を、あなたにお知らせしたがっていらっしゃるのですよ。このお盆の上のお手紙を御覧下さい。お嬢様がお書きになったのです。お嬢様は、あなたが悲しくお休みにならないようにとお思いになったのでしょう。御主人は、明日あなたにも来ていただきたいと仰しゃっておいででした。明日から、あなたはお嬢様のお附きになるはずです。今夜は、これからここにあるものを、また屋根越しに持って帰らなければなりません。」
 輝かしい顔で、こういい終りますと、ラム・ダスは額手礼《サラアム》をして、身軽に、音も立てずに、天窓から抜け出して行きました。ベッキイはそれを見ると、「あの人はあんなにして、やすやすといろいろのものを運びこんだのだな。」と思いました。

      十九 アンヌ

『大屋敷』の子供部屋は、今までにないような大騒ぎでした。子供達は『乞食じゃアない小さな女の子』と近づきになったため、こうまでうれしいことが湧き出て来ようとは、夢にも思いませんでした。セエラは、ひどい苦労をして来ていることのために、よけい皆から大事にされるのでした。誰も彼もが、セエラの身の上話を、繰り返し繰り返し聞きたがりました。誰しも炉辺で温かにしている時には、屋根裏のひどい寒さの話なども、気持よく聞くことが出来るものです。また、メルチセデクのことや、雀共のことや、天窓から頭を出すと見える四辺《よも》の景色のことなど聞くと、屋根裏部屋は面白い所のように思われるのがあたりまえです。そんな面白いことがあれば、寒くても、殺風景でも、そんなことは気になるまいと思われるのが当然です。
 子供達が一番よろこんだのは、あの饗宴と空想とがほんとになって現れて来たところでした。セエラはカリスフォド氏に見つけられた翌日、初めてこの話をしたのでした。その日、大屋敷の人達はお茶に招ばれ、セエラと一緒に炉の前に坐ったり
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