キイも真顔でいいました。
「今度は何をしましょう。じっと考えて待っていると、何か思いつくものだわ。魔法の神様がそれを教えてくれるのだわ。」
 セエラのよくする空想の一つは、家《うち》のそとでいろいろの思いつきが呼び出されるのを待っているというのでした。セエラがじっと立って何を待ち設けているのを、ベッキイはよく見ました。セエラはいつものようにしばらくじっと立っていましたが、やがてまたいつものように、明るい笑顔になりました。
「そら来た。私、何をすればいいか判ったわ。私が宮様《プリンセス》時代に持っていた、あの古鞄《ふるかばん》をあけてみましょう。」
 鞄の隅には小さな箱があり、その中に小さな手巾《ハンケチ》が一|打《ダース》入っていました。セエラはそれを持っていそいそとテエブルの方に走って行き、レエスの縁がそり返るように工夫して、赤いテエブル掛の上に並べました。並べる間も、彼女は何か魔法に動かされているようでした。
「そこにお皿があるの。黄金《こがね》のお皿よ。それから、このナプキンには手のこんだ刺繍《ししゅう》がしてある。スペインの尼さんが尼寺の中でした刺繍なのよ。ほら、目に見えて来るでしょう。」
 セエラはまた鞄の中から、古い夏帽子を見附け出し、飾《かざり》の花を引きはがして、テエブルの上に飾りました。
「いい匂がするでしょう。」
 セエラは夢の中の人のように、幸福そうな微笑《ほほえみ》をたたえながら、石鹸皿を雪花石膏《アラバスタア》の水盤《すいばん》に見たてて、薔薇の花を盛りました。それから毛糸を包んだ紅白の薄紙で、お皿を折り、残った紙と花とは、蝋燭台を飾るのに用いました。セエラは一歩退いて、飾られたテエブルを眺めました。そこにあるのは、赤い肩掛をかけた古テエブルと、鞄から出した塵屑《ごみくず》とだけでしたが、セエラは魔法の力で、奇蹟が行われたのを見るのでした。ベッキイまで、そこらを見廻していうのでした。
「あの、これが――これが、あのバスティユ?――何かに変ってしまったの?」
「そうですとも。饗宴場《きょうえんじょう》に変ったのよ。」
 その時戸が開いて、アアミンガアドがよろよろと入ってきました。彼女は肌寒い暗闇の中から、すっかり飾られた部屋に入って来ると、思わず声をあげました。
「セエラさん、あなたみたいに何でも上手な方は見たことないわ。」
「すてきでしょう
前へ 次へ
全125ページ中95ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
バーネット フランシス・ホジソン・エリザ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング