いるようでしたが、雀のような心を持っているとみえ、さっきの雀のように、だんだんパン屑の方に寄って来ました。
「おいで。私は罠じゃアないから。食べてもいいのだよ、可哀そうに。バスティユの囚人達は、鼠と仲よしになったっていうから、私もお前と仲よくなろうかしら。」
どうして動物に物が解るのか。その訳は解りませんが、しかし、動物に物の解るのは事実です。ことによると世の中には言葉でない言葉があって、何にでも、それが通じるのかもしれません。ことによると、また世の中の事物には、何にでも、目に見えぬ魂があって、声も立てず、話し合うことが出来るのかもしれません。それはとにかく、鼠はセエラがこういった瞬間、もう安心だと思ったようでした。彼はそろそろとパン屑の方に行き、それを食べはじめました。彼は食べながら、さっきの雀のように、時々セエラの方を見て、どうもすみません、というような眼をしました。セエラは、それにひどく心を動かされました。
それから一週間ほどたったある晩、アアミンガアドがそっと屋根裏へ忍び登って、戸を叩きますと、室内は妙にひっそりしていました。セエラは寝てしまったのかしら、と訝《いぶか》っているところへ、ふいにセエラの低い笑い声が聞えて来ました。
「ほら、メルチセデク、それを持ってお帰り。おかみさんのところへお帰り。」
そういうと、すぐセエラは戸を開きました。
「セエラさん、誰? 誰と話してたの?」
「お話してもいいけど、あなたびっくりして、声を立てたりしちゃア、駄目よ。」
アアミンガアドは、その場で危《あぶな》く声を立てるところでした。見渡したところ、室内には誰もいないので、セエラはお化《ばけ》と話していたのかと、アアミンガアドは思ったのでした。
「何か、怖いお話なの?」
「怖がる人もあるわ。私だって初めは怖かったけど、もう何でもないわ。」
「お化?」
「いやアだ。――鼠よ。」
アアミンガアドは一飛に飛んで、寝台《ベット》の真中に坐りました。声は立てませんでしたが、怖さのあまり息をはずませていました。
「鼠? 鼠ですって?」
「慣れてるから怖かアないのよ。私が呼べば出てくるくらいよ。あなたさえ怖くなければ、呼んでみるわ。」
アアミンガアドは、初めは怯えて寝台《ベット》の上で足を縮めてばかりいましたが、セエラが落ち着いた顔で、メルチセデクが初めて出て来た時の話をす
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