りませんでした。だからセエラも、アアミンガアドのことは自然忘れていたのでした。
それに、アアミンガアドは急に呼ばれて、二三週間|自宅《うち》に帰っていましたので、忘れられるのがあたりまえだったのです。彼女が学校へ帰って来た時には、セエラの姿は見えませんでした。二三日目にやっと見付けた時には、セエラは両手に一杯|繕物《つくろいもの》を持っていました。セエラはもう着物の繕い方まで教わっていたのでした。セエラは蒼ざめて、人のちがったような顔をしていました。小さくなった、おかしな着物を着て、黒い細い脚をにょきりと出していました。
「まア、セエラさん、あなただったの!」
「ええ。」
セエラは顔を紅らめました。
セエラは衣類を堆《うずたか》く重ねて持ち、落ちないように顎で上を押えていました。セエラにまともに見つめられると、アアミンガアドはよけいどうしていいか判らなくなりました。セエラは様子が変ったと同時に、何かまるで知らない女の子になってしまったのではないか?――アアミンガアドにはそうも思えるのでした。
「まア、あなた、どう? お丈夫?」
「わからないわ。あなた、いかが?」
「私は――私は、おかげ様で、丈夫よ。」アアミンガアドは羞しくてわけがわからなくなって来ました。で、急に、何かもっと友達らしいことをいわなければならないと思いました。「あなた――あなた、あの、ほんとにお不幸《ふしあわせ》なの?」
その時のセエラのしうちは、よくありませんでした。セエラの傷《きずつ》いた心臓は、ちょうど昂《たか》ぶっている時でしたので、こんな物のいいようも知らない人からは、早くのがれた方がいいと思いました。
「じゃア、あなたはどう思うの? 私が幸《しあわせ》だとお思いになるの?」
セエラはそういい残して、さっさと去って行ってしまいました。
その後、時がたつにつれて、セエラは、アアミンガアドを責むべきではなかったと思うようになりました。ただあの時は、自分の不幸のため、何もかも忘れてしまっていたので、アアミンガアドの心ない言葉に腹が立ってならなかったのでした。それに、落ち着いて考えて見ると、アアミンガアドはいつも気のきかない子で、心を籠めて何かしようとすると、よけいやりそこなうのが常だったのでした。
それから五六週間の間、二人は何かに遮《さえぎ》られていて、近よることが出来ませんでした
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