アロアさんの誕生祝いの日だろう。」とおじいさんは、小屋の隅っこの床の中から聞きました。少年はだまってうなずきました。おじいさんが、それをおぼえていたのが少年はどんなに切なかったでしょう。
「じゃどうしてお前出かけないんだい。」と、おじいさんはまた問いかけました。
「お前、いつの年だって行かないことはないじゃないか。」
「だって僕、おじいさんが病気だし――」と少年は、うつむいて言葉を濁しました。
「なんの、なんの、わしのことなら気にせんで行っといで。出がけにビュレットのおばさんに頼んで行ってさえくれればすぐ来てみてくれるよ。――ネルロ、お前どうしたんだ。まさかあそこのお嬢さんの悪口でもしゃべったんじゃあるまいな。」と、おじいさんはふしぎでならないのでした。
「いいえ、おじいさん。悪口なんか――」と、少年は口早に答えましたが、そのうなだれた顔はあかくなりました。
「なんでもないのよおじいさん。ただ、コゼツの旦那が、今年は僕を招《よ》ばなかっただけ。あの人、ちょっと僕に思いちがいをしてるらしいの。」
「だってお前、なんにも悪いことはしなかったんだろう。」
「それが、いいかわるいか、僕には分ら
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