があつて、世界各地方の住民の文明進歩の程度を測る爲め、諸國の學者に十點を滿點として評點せしめ、其平均をとつて各地の文明點數を定めるといふ試みをやつて見たが、其地方の區分法もかなり綿密で、一國の内の中でも人情氣風の差によつて幾つにも分けて居るから、世界は總計百八十五區に分かれ我日本の如きも、南日本と北日本との二つにして、別々に點をつけることになつて居る。而して其採點の參考となるべき要件としては、其地方の住民の自發的活動力、新思想形成力及び其實行能力、自治力、他人種を統治指導する能力等諸種能力具有の程度、及び道徳の標準の高低等であつた。五十四人の採點平均の結果最高點は英國の十點であるが、日本のうち南日本は八點三分、北日本は六點二分とある。斯かる計算法は隨分精密に見えて、而かも危ないものであるのみならず、私は日本の南北兩半の間に果して二點一分の差あるかどうかを斷言し兼ねるが、兎に角日本の北半、殊に奧州が、南日本よりも文明の今もなほ遲くれて居ることは爭ふべからざることゝ思ふ。されば奧州史の研究は、奧州にとりて得意な懷古の種たらしむるよりも、寧ろ將來發奮の資たらしむること、何よりも願はしいことである。



底本:「日本中世史の研究」同文館
   1929(昭和4)年11月20日発行
初出:「奧州沿革史論」仁友社
   1916(大正5)年6月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:はまなかひとし
校正:土屋隆
2010年1月21日作成
2010年2月18日修正
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