たことも稀ではない。
禪宗の最も多く侵略したものも亦天台で眞言は之に次ぐ、淨土に對しては侵し方が侵された分より多い。
淨土眞宗に至ては天台を侵略したこと最甚しく、今日現存の鎌倉時代からの眞宗寺で、天台から轉宗したのが二百許りある、眞言の七十三が之に次ぐ、遙かに下るが、之に次では法相である、又眞宗は新宗派の中で淨土と禪とを少しづゝ侵略して居る。
時宗の侵略したのも天台に最も多く眞言之に次ぐ、但し小規模の宗派丈け侵略した數は少い。
以上の四宗がいづれも天台を最も多く侵略して居るのは其以前に天台宗の寺が眞言其他の諸宗よりもすぐれて數多かつた爲でもあらうが、之と全く異つた有樣を示して居るのは日蓮宗で數字に於ては其侵略の度眞宗の多いのには及ばぬけれど、兎に角日蓮宗の最も多く侵略したのは眞言で、天台は却つて其三分一位である、これは注意すべき事だ、又新宗派の中では禪を少しく侵略して居る、眞言亡國、禪天魔を叫んだだけあると云つてもよろしい、但し念佛宗をば無間と譏つたけれど、淨土寺を少しく侵略したのみで、眞宗とは全く沒交渉である、眞言よりは少いけれども、天台も亦侵略を免れなかつたのは、假令日蓮宗が天台の復興を主張するとしても實際此兩宗の間には性質上大差があるからであらうと思はれる。
底本:「日本中世史の研究」同文館
1929(昭和4)年11月20日発行
底本の親本:「史學研究會講演集 第四輯」冨山房
1912(明治45)年4月16日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※「蓮」は底本では、「二点しんにょう+(くさかんむり/車)」となっています。これらの差異を、JIS X 0208規格票「6.6.2 字体の実現としての字形」に言う、「デザイン差」とみてよいか判断が付かなかったので、本文は「蓮」で入力した上で、その旨をここに記載します。
※「獻」と「献」の混在は底本通りにしました。
※誤植を疑った箇所は底本の親本を参照して改めました。また、底本には以下に挙げるように誤植が疑われる箇所がありましたが、底本の親本でも同様であり、正しい形を判定することに困難を感じたので底本通りとし、ママ注記を付けました。
○其教:「其數」の誤植か。
○進だのて:「進だので」の誤植か。
入力:はまなかひとし
校正:小林繁雄
2005年1月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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