をすることが出來ぬ、然るに此の如き困難は單に淨土宗と眞宗とに於て出逢ふばかりでなく、時宗にもある、日蓮宗にもある、また禪宗にもある、時宗では阿の字の上にいろ/\の字を加へて名とする習慣であるから時々重複を免れないが、日蓮宗の方はまた二字の僧名の中で上の一字は日の字と定まつて居るから、區別の用としては二番目の字だけであつて、これも同名異人が多い、禪宗に至つては、一人で同時に三以上の號を有して居るのが珍らしくない、殊に少しエライ禪僧になると隨分長い諡がついて居る、若し丁寧に吟味すれば全く同名と云ふことは殆どないが、其うちの二字だけ書いてある場合には屡※[#二の字点、1−2−22]他の名僧の諡號と間違ふことがあつて、之を區別するには非常の手數が入る。
此の如く寺院の縁起を土臺として、宗教史を研究するには種々の危險と困難とを伴ふのであるが、それでも全く之を棄てるに忍ばざるのみならず、之を以て研究の根本材料としたのには、亦多少の理由がある、即個々の寺院の縁起の中には信用の出來ぬものあるけれども、さりとて如何なる縁起も盡く信用の出來ぬと云ふ譯ではないのみならず、宮廷にも出入しない、又幕府の眷顧を
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