り易いものである……。
『最初自動書記の文字は小さくて不規則であったので、ゆるゆると気をつけて書く必要があり、肉眼で手元と、行間を注意して居るのであった。さもないと、すべてが混乱して、まとまりがつかないものになった。
『が、しばらく過ぎると、そんな必要は漸《ようや》く消滅した。文字は一層小さくなったが同時に一層規則正しく、又綺麗になった。私はいつも、頁頭に質問事項を書いて置くと、之《これ》に対する解答が自動的に現れ、それには段落までつけてあるので、直ちに印刷に附《ふ》しても差支えないのであった。神《ゴッド》という字は、いつも頭文字で現れ、いかにも敬意を表するかの如《ごと》く、それに限りて、ゆっくり書くのであった。取扱わるる題目《だいもく》は、悉《ことごと》く高尚《こうしょう》純潔《じゅんけつ》なものばかり、そして他人に示すよりも、私自身の指南車《しなんしゃ》としてよいものばかりであった。自動書記は一八八〇年まで連続的に現れたが、その中に気軽な冗談とか、洒落《しゃれ》とか、野鄙《やひ》な文句とか、頓珍漢《とんちんかん》な理窟とか、嘘や出鱈目《でたらめ》とかは、私の知れる限りに於《おい》て
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