真理の開拓者であり、進歩の使徒であり、極度に無慾純潔、少しも驕慢、自負、自家宣伝等の臭味がなかった。それでこそ、あれほどの仕事ができたのである。若《も》し彼等にして一片の利己心があったなら、そは必ず彼等の成功の心臓部を喰い破ったであろう。
 われ等が求むる所は、右にのぶるが如き人物である。慈悲心にとみ、熱情にとみ、自己を忘れて真理を求め、神業一つを睨みつめて、現世的欲求を棄てて顧みない人物がほしいのである。そんな人格が暁天《ぎょうてん》の星の如く稀であるべきは、元よりいうまでもない。それ丈けそう言った人格は尊い[#「尊い」は底本では「尊 い」]。友よ、落ついた、熱心な、そして誠実な哲学者の心を以《もっ》て心とせよ。又慈悲深く、寛厚《かんこう》にして、常に救いの手をさしのべんとする、仁者の心を以《もっ》て心とせよ。更に又為すべき事を為して、報酬を求めざる神の僕《しもべ》の克己心をこれに加えよ。かかる人格にして初めて、気高く、聖《きよ》く、美しき仕事ができる。われ等としても、最大の注意を以《もっ》て之《これ》を監視し、又警護する。同時に神の直属の天使達も、亦《また》常に温顔を以《もっ》て之
前へ 次へ
全104ページ中49ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浅野 和三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング