と音を立てながら絶えず私の肩のあたりに撒《ま》き散らしている細かい日の光をなんて気持がいいんだろうと思っているうちに、自分の心臓が何度目かに劇《はげ》しくしめつけられるのを感じた。が、こんどはそれはすぐ止まず、まあこれは一体どうしたのだろうと思い出した程、長くつづいていた。私はその腰かけの背に両手をかけて漸との事で上半身を支えていたが、その両手に急に力がなくなって……

   菜穂子の追記

 此処《ここ》で、母の日記は中絶している。その日記の一番終りに記されてある或る秋の日の小さな出来事があってから、丁度一箇年立って、やはり同じ山の家で、母がその日のことを何を思い立たれてか急にお書き出しになっていらしった折も折、再度の狭心症の発作に襲われてそのままお倒れになった。この手帳はその意識を失われた母の傍らに、書きかけのまま開かれてあったのを爺やが見つけたものである。
 母の危篤の知らせに驚いて東京から駈けつけた私は、母の死後、爺やから渡された手帳が母の最近の日記らしいのをすぐ認めたが、そのときは何かすぐそれを読んで見ようという気にはなれなかった。私はこのまま、それをO村の小屋に残してきた。
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