何か私に突っかかるような嗄《しゃが》れ声だった。
「それでは、お母様は森さんのことはどうお思いになっていらっしゃるの?」
「森さんのこと?……」私はちょっと意外な問いに戸惑いしながら、お前の方へ徐かに目をもっていった。
「…………」こんどはお前が黙って頷《うなず》いた。
「それとこれとは、お前、全然……」私は何となく曖昧《あいまい》な調子でそう云いかけているうちに、急にいまのお前のこだわったようなものの問い方で、森さんが私達の不和の原因となったとお前の思い込んでいたものがはっきりと分ったような気がした。ずっと前に亡くなられたお父様のことがいつまでもお前の念頭から離れなかったのだ。あの頃のお前は私というものがお前の考えている母というものから抜け出して行ってしまいそうだったので気が気でなかったのだ。それがお前の思い過しであったことは、いまのお前ならよく分るだろう。けれども、そのときは私もまた私でお前にそれがそうであることを率直に云ってやれなかった、どうしてだかそんな事までが自分の思うように云えないように事物をすこし込み入らせて私は考えがちであった、いわば私の唯一の過失はそこにこそあったのだ
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