ころもち紫がかっている。どこかで頬白がかすかに啼《な》きながら枝移りしている。聞えるものはたったそれだけ。(そのまま目をつぶる。)そのあたりには兎やら雉子《きじ》やらのみだれた足跡がついている。そうしてそんな中に雑《ま》じって、一すじだけ、誰かの足跡が幽《かす》かについている。それは僕自身のだか、立原のだか……。
 学生 急に寒くなってきましたね。もう窓をしめましょうか。



底本:「昭和文学全集 第6巻」小学館
   1988(昭和63)年6月1日初版第1刷発行
底本の親本:「堀辰雄全集 第3巻」筑摩書房
   1977(昭和52)年11月30日初版第1刷発行
初出:「新潮」
   1946(昭和21)年3月号
初収単行本:「堀辰雄作品集第六・花を持てる女」角川書店
   1948(昭和23)年4月1日
※筑摩書房の全集版の底本は角川書店版による。
※初出情報は、「堀辰雄全集 第3巻」筑摩書房、1977(昭和52)年11月30日、解題による。
入力:kompass
校正:門田裕志
2004年1月21日作成
2007年8月29日修正
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