花を持てる女
堀辰雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)亡《な》き母
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)小春|日和《びより》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#アステリズム、1−12−94]
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一
私はその日はじめて妻をつれて亡《な》き母の墓まいりに往《い》った。
円通寺というその古い寺のある請地町《うけじまち》は、向島《むこうじま》の私たちのうちからそう離れてもいないし、それにそこいらの場末の町々は私の小さい時からいろいろと馴染《なじみ》のあるところなので、一度ぐらいはそういうところも妻に見せておこうと思って、寺まで曳舟通《ひきふねどお》りを歩いていってみることにした。私たちのうちを出て、源森川に添ってしばらく往くと、やがて曳舟通りに出る。それからその掘割に添いながら、北に向うと、庚申塚《こうしんづか》橋とか、小梅橋とか、七本松橋とか、そういうなつかしい名まえをもった木の橋がいくつも私たちの目のまえ
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