意しなければならない。かるがゆえにいま、この思索に入った以前、かつて私はいったい何ものであると私が信じたのか、改めて省察しよう。このものから次に何であれ右に示した根拠によって極めてわずかなりとも薄弱にせられ得るものは引き去り、かくて遂にまさしく確実で揺がし得ないもののみが残るようにしよう。
そこで以前、私はいったい何であると考えたのか。言うまでもなく、人間と考えたのであった。しかしながら人間とは何か。理性的動物と私は言うでもあろうか。否。何故というに、さすれば後に、動物とはいったい何か、また理性的とは何か、と問わねばならないであろうし、そしてかようにして私は一個の問題から多数の、しかもいっそう困難な問題へ落ち込むであろうから。またいま私はこのような煩瑣な問題で空費しようと欲するほど多くの閑暇を有しないのである。むしろ私はここで、私は何であるかと私が考察したたびごとに、何が以前私の思想に、おのずと、私の本性に導かれて、現われたか、に注意しよう。そこに現われたのは、もちろん、まず第一に、私が顔、手、腕、そしてこのもろもろの部分の全体の機械を有するということであって、かようなものは死骸にお
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