がいかなる仕方で解決すべきものであるかを知らないのである。かえって、あたかも渦巻く深淵の中へ不意に落ち込んだように、私は狼狽して、足を底に着けることもできなければ、泳いで水面へ脱出することもできないというさまであった。しかしなおも私は努力し、昨日進んだと同じ道を、もちろん、極めてわずかであれ疑いを容れるものはすべて、あたかもそれが全く偽であることを私がはっきり知っているのと同じように、払い除けつつ、改めて辿ろう。そして何か確実なものに、あるいは、余のことが何もできねば、少くともまさにこのこと、すなわち、確実なものは何もないということを確実なこととして認識するに至るまで、さらに先へ歩み続けよう。アルキメデスは、全地球をその場所から移動させるために、一つの確固不動の点のほか何も求めなかった。もし私が極めてわずかなものであれ何か確実で揺るがし得ないものを見出すならば、私はまた大きなものを希望することができるのである。
そこで私は、私が見るすべてのものは偽であると仮定する。また、私はひとを欺く記憶が表現するものはいかなるものにせよかつて存在しなかったと信じることにする。私はまったく何らの感官
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