ころのすべてのものは、実際にそれらのものについて肯定せられ得ることに注意するように、私は要請する。例えば、三角形の本性のうちにはその三つの角は二直形に等しいということが含まれ、また物体すなわち延長を有するもののうちには可分性が(というのはそれを少くとも思惟によって分割し得ないほど小さな延長を有するものを我々は何ら考え得ないから)含まれるゆえに、すべての三角形の三つの角は二直角に等しい、またすべての物体は可分であると言うのは真である。
 第五に[#「第五に」に傍点]、私は、読者がこの上なく完全な実有の本性の観想に長くまた多くとどまるように、要請する、そして中にも、あらゆる他の本性の観念のうちにはたしかに可能的存在が含まれるが、神の観念のうちにはしかし単に可能的存在のみではなく、また実に必然的存在が含まれることを考察するように、要請する。なぜなら、ただこのことから、そして何等まわりくどい議論なしに、神が存在することを読者は認識するであろう、そしてそれは読者にとって、二が偶数であり、あるいは三が奇数であること、及びこれに類することに劣らず、それ自身によって明かであるであろう。というのは、或る人々にはそれ自身によって明かであることがらであるのに、他の人々には長々しい議論によってでないと理解せられないものがあるからである。
 第六に[#「第六に」に傍点]、私は、読者が私の省察のなかで挙げたところの、明晰で判明な知覚のすべての例、さらにまた不明瞭で不分明な知覚のすべての例を熟考することによって、明晰に認識せられるものを不明瞭なものから直別することに慣れるように、要請する。なぜなら、これは規則によってよりも例によっていっそう容易に学ばれるから、そして私はかしこでこのことがらのすべての例を説明したか、あるいは少くとも或る程度触れておいたと思う。
 第七に[#「第七に」に傍点]、そして最期に、私は、読者が明晰に知覚したもののうちには決して何等の虚偽も発見せず、反対にただ不明瞭に把捉したもののうちには偶然によるほか何らの真理も見出さなかったことに注意することによつて、単に感覚の先入見に基づいて、あるいは何か知られていないものを含む仮説に基づいて、純粋な悟性によって明晰にかつ判明に知覚せられるところのものに疑いをいれることは、まったく不合理であるということを考察するように、要請する。なぜ
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