の――たゞ役目をして頂くといふのでなく、助けて頂くといふのですからね。
ランク なほ結構です。どういふ意味だかちよつと私には見當がつかないが、さあさあお話なさい。私を信用して下さらないのですか?
ノラ 外に信用する人はありません。私に取つては貴方が一番眞實なお友達なのですから。私お話するわ。それでね、先生、お願ひといふのは、ここに一つ事件が起りかゝつてゐましてね、それをやめて戴きたいのです、トル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ルトはあんな風ですから、私を愛してることといつたら全く不思議なほどでせう。ですから何か起りでもしようものなら、私のために命を捨てるくらゐは何とも思つてゐませんの。
ランク (女の方に屈みながら)ノラさん、あなたはヘルマー君の外には誰も――
ノラ (ちよつと身體を起して)誰も――?
ランク 貴女のために命を捨てゝ厭はない者はゐないと思つてらつしやるのですか。
ノラ (悲しげに)まあ! (顏をおほふ)
ランク 私は――是非このことをお別れする前にいつて置かうと心に誓つたのですよ、こんないい機會はまたとなからうから――さうだ、ノラさん、これだけ申したら私の心持はわ
前へ
次へ
全147ページ中81ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
イプセン ヘンリック の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング