点付き片仮名ワ、1−7−82]ルトのためにもなんだけれど(箱の中から色々の物を取り出す)先生、こゝへお掛けなさい、お目にかけるものがありますわ。
ランク (坐りながら)何ですそれは?
ノラ さ、これ!
ランク 絹の靴下。
ノラ 肉色、綺麗でせう? おやどうしよう。暗くなつたこと、けど明日はね――あら、いけませんよ、踵の方ばかし見ていらつしやい、さ、もういゝわ、もう上の方を見てもよくつてよ。
ランク ふむ――(じろ/\眺める)
ノラ どうして、そんなにじつと眺めていらつしやるの? 私に似合はないこと。
ランク さあ何と云つたらいゝか。さうしたことは私にはわかりません。
ノラ (暫く男の方を見てゐて)まあ、いぢわる。(靴下で男の耳の處を輕く打つ)これが罰ですよ(靴下を元のやうに卷いておく)
ランク まだ外に何か珍らしいものがありますか?
ノラ もう、あなたには見せない。禮儀を知らないから。(ちよつと鼻唄を歌ひ、色々な物を探しまはる)
ランク (暫く默つてゐた後)かうして、あなた方と親しくして無駄口でも利いてると私はつくづくさう思ひますね、これが、もしまるでこの家に出入りをしなかつたら、私の
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