の放蕩の償ひをしなくちやならないなんて。
ノラ (左手のテーブルに向つて)多分、あなたのお父さんはアスパラガスや鳥の卵がお好きだつたでせうね?
ランク えゝ、それから菌《きのこ》も好きでした。
ノラ さうでせうね菌《きのこ》も。それからきつと牡蠣もお好きでしたらう?
ランク えゝ、牡蠣、牡蠣は勿論ですとも。
ノラ それから葡萄酒、シャンペン、皆お好きでしたらう? 全くみんな結構なものばかしだけど、それが背髓を惡くするなんてね、ホヽヽヽ。
ランク それも惡くなつた背髓が自分でそんなものを食つたわけぢやないんですからね。
ノラ えゝ、それが何よりもね。
ランク (探るやうな目付で女を見る)ふむ――
ノラ (ちよつとして)何をお笑ひなすつて?
ランク いゝや、お笑ひなすつたのは、貴女だ。
ノラ いゝえ、あなたですよ、先生、お笑ひなすつたのは。
ランク (立ち上りながら)あなた――あなたも相當なものですね。
ノラ 私、今日は氣が違ひさうなんです。(唐突に)
ランク さう、そんな風ですよ。
ノラ (兩手を男の肩にかけ)ね、先生、あなたをトル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ルトや私から連れて
前へ
次へ
全147ページ中77ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
イプセン ヘンリック の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング