ね、私、法律のことはよく知らないけれど、きつと何處かに今いつたやうなことが許してあると思ひますわ。それを貴方はご存じないんだから――貴方のやうな法律家が! 貴方はきつと碌な法律家ぢやないんですね、クログスタットさん。
クログスタット さうかも知れません。けれどもかういふことになると――今起つてるやうな事件になると、私はよく知つてゐますよ。おわかりになりましたか? それぢやあ宜しい。それから先はご隨意になさい。たゞ申上げて置きたいのは、私がもう一度泥沼へ落ちるとなると、貴女もご一緒に來なくてはなりませんよ。(ちよつと腰を屈めて廊下から出て行く)
ノラ (暫く考へながら立つてゐて、そして頭を立てる)何でそんなことが! あいつ私を威かさうと思つてやがる。私、そんな間拔ぢやない! (子供の衣服を疊み始めるその手を止めて)けれど――いゝえ、そんなことのあらうはずはない。愛のためにしたんだもの――
子供 (左手の扉の處で)お母さん、よそのおぢさん、もう行つちまひましたよ。
ノラ えゝえ、知つてますよ。けれどね、よそのおぢさんの來たことを誰にもいつてはいけませんよ。わかりましたか、パパにだつていけま
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