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第三幕
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同じ室。中央にテーブル、その廻りに二三脚の椅子。テーブルの上にはランプが點つてゐる。廊下への扉は開いたまゝで二階から舞踏の音樂が聞える。
リンデン夫人は、テーブルの側によつて、放心の體で書物を繰り擴げてゐる。讀まうとして見るが注意が集まらない樣子。度々聞耳を立て、廊下の扉の方を氣遣はしげに見る。
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リンデン (懷中時計を見て)まだやつてこない、時間はもう無くなりかけてゐるのに、もしあの人がこなかつたら――(また聞耳を立てる)あ、やつて來た――(廊下に行つて、そつと外の扉を開ける。靜かな足音が階段の方に聞える。リンデンは囁く)お入んなさい、誰もゐないから。
クログスタット (入口の所で)あなたの置手紙を讀みました、あれはどういふ譯でおよこしになつたのですか?
リンデン 是非あなたに、お話したいことがありまして。
クログスタット さうですか? そしてこの家で?
リンデン 私の間借をしてます家では、お目にかゝれないのですよ、別な入口がないものですから。まあお入
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