けちやいけませんよ――郵便受なんか見ちやいけませんよ。
ヘルマー あゝ、お前やつぱり、あの男を怖がつてるんだな――
ノラ さうですよ、私怖いんですよ。
ヘルマー お前の顏にちやんと書いてあるよ。ノラ――あいつから來た手紙があの郵便受の中にあるな。
ノラ どうですか、さうかも知れませんね。けれどもあなた、今は何だつて讀んぢやいけませんよ。すつかり濟んじまふまでは、私とあなたの間には外のことは一切なしにするんですよ。
ランク (ヘルマーに向つて柔かに)逆らはないでおいた方がいゝ。
ヘルマー (手を女にかけながら)赤ん坊だからな、したいやうにさせておくさ。けれども、明日の晩踊りがすんだら――
ノラ その時は、あなたの自由よ。
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(エレンが右手の入口のところへ出て來る)
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エレン 奧さま、お夕飯の仕度が出來ました。
ノラ シャンペンを出しておおきよ、エレン。
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(エレンお辭儀をする)
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ヘルマー おや/\、宴會の
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