體的なのである。そのままに留まつたならば、裏にある層は全く隱れたる存在を保たねばならぬであらう。それ故この裏面が表面へ浮び出で從つて内容に内在する兩契機がともに表面化し客體面における二つの異なつた領域として顯はになり、他者性は客體内容同志の間における聯關となることが、客體成立における必然的なる第二歩でなければならぬ。客體面は、表裏兩層の存在とそれによる緊張とにより、又そのことの歸結として、裏面が表面に進出しようともがくことによつて、穩かなる滑かなる平面的存在を持續し得ず、彎曲を見動搖を來すを免れぬ。これが即ち活動である。さて觀想の目指す所は客體面の凹凸を矯正して純然たる平面に還元するに存する。しかしながらこの事は果して又いかにして成遂げられるであらうか。客體が、たとひ觀らるべきもの顯はなるべきものとしてにせよ、主體と對立してゐる間は、それの純粹なる平面的存在は望み得べきでない。それ故一旦活動の性格の克服へと發足した主體は、更に一切の他者性の克服へ歩みを進めねばならぬであらう。すなはち主體は、自己を表現し盡し殘る隅なく顯はとなることによつて、全く客體のうちに融け込み、逆に客體は他者である
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