ム推理の上に立つてゐるであらうが、背後にあつてそれを支持しそれに生命を與へる思想や信念は、生の源より發したものであり且つそれぞれ典型的意義を有する。それらのうち最も有力なる又最も代表的なる二つを吾々は今試みに「存在論的」(或は本體論的 ontologisch)及び「目的論的」(teleologisch)と名づけよう。存在論的論證は、靈魂正しくいへば主體そのものの眞の存在・本質的性格より出發し、それと他者との關係交渉を原則としては考慮に入れぬものである。これと異なつて目的論的論證は世界のうちにあり又生きる主體、即ち他者との關係交渉において立つ主體を考察の對象とする。
古代はプラトン及びプロティノスより、中世はトマス・アクィナス、近世はライプニッツやメンデルスゾーンに及んで、最も廣く行はれた姿においては、存在論的論證は主體の單純性を論據とする。物體が空間的存在を保つものとして複合的であり互に外面的に境を接する存在者より成立つのに反して、靈魂は單純であり從つてむしろ複合的なるものに統一を與へるものである故、組成する要素に分解されず從つて壞滅することがない、といふのがそれの論旨である。今局部
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